地平の旅人Act.32 荒れ狂う欲望

   Act.32 荒れ狂う欲望

その次の日、エルヴズユンデの修理は急ピッチで進められていた。
「現在、左腕に縮退炉を搭載中です。
出力で考えれば、重力レンズ式ブラスターも使用可能になるでしょう。」
「ええ、プリズナーブラスターが使用できれば、それだけでもかなり戦えます。」
「しかし、背中に追加ブースターは、本当に必要無いのですかな?」
「ええ、エルヴズユンデが完全復活した際に、いずれにしても取り外さなければなりません。」
ギルティアが、頷く。
「確かにそうですな・・・。
それに、ギルティアさんの腕なら、その程度問題になりませんか・・・。」
アルフレッドが、そう呟き、修理作業に戻っていった。

ギルティアが、再び屋上に登り、町並みを眺める。
以前より活気が増している、そんな気がした。
「・・・いい傾向です。」
ギルティアが、静かに微笑む。
「これで、この世界における、私の使命は完全に終わったようです。
・・・心置きなく、旅を続けられますね。」
ギルティアは、そう言って、自分が借りている部屋に戻っていった・・・。

・・・その日の夜だった。

凄まじい爆発音で、ギルティアは目が覚めた。
「!?」
ギルティアが、表に出る。
既にアルフレッドとランが外に出ていた。
「・・・何事です!!」
「あれを・・・!」
アルフレッドが指差す。
「・・・あれは・・・!!」
工業地帯の遥か彼方は、燃え盛っていた。
その場所に立っていたのは、巨大な機動兵器・・・いや、あれは機動兵器ではない。
金属は埋め込まれているが、どちらかと言うと、生物だ。
そして、あの禍々しさ、ギルティアは、それを知っていた。
ギルティアは、思わず呟いた。
「・・・異形・・・!!」
しかし、あのサイズは異常だ。
それに、閉鎖空間外に出てくるなど、前代未聞でもある。
「・・・エルヴズユンデの修理を急いでください!!」
「は、はい!」
すると、それと同時のように、シリウスから連絡が入る。
「お嬢ちゃん、それと、アルフレッド社長!!
こいつぁ、大変に厄介な事になりおったな・・・!!」
「シリウス!?」
「・・・エルヴズユンデは修理中だろう!?
・・・今、ウチの社員をそちらに向かわせた!
せいぜい、こき使ってやってくれ!」
シリウスは、そう言って笑う。
「い、いいのですか!?」
アルフレッドが聞き返す。
「・・・あの化けもの、お嬢ちゃんが言っていた『異形』なのであろう!?
ならば、現状、儂らでも時間稼ぎ出来るかは分からぬ。
ギルティアお嬢ちゃん・・・頼む、この世界を護ってくれ・・・!
・・・世界を護る鍵、そのお手並み、拝見と行こうぞ。」
シリウスは、真剣な表情でそう言う。
「儂は、秘密兵器を持ち出して時間を稼ぐ・・・後は、頼むぞ・・・!」
そういうと、シリウスは通信を切った。

シリウスは、アンファースの足元にいた。
「まさか、夢がこんなに早く叶うとはなァ・・・。」
シリウスは、そのままアンファースに乗る。
「まぁ、夢は夢でも、悪夢だがな・・・。
・・・だが、それもまた良し・・・行こうぞ、アンファース!!」
アンファースが、会社のハッチを手でこじ開け、外に出る。
アンファースは、右腕に、非常に長い砲身を持った砲を構えていた。
「・・・さて、儂が作った『対異形用兵装』が、果たして通じるか・・・。
そして、儂の予想が正しければ、奴は・・・。」
シリウスが、遥か遠くの巨体を睨む。
巨大な異形は、遥か彼方から、真っ直ぐに歩いてきていた。
そう・・・その先にあるのは、アルフレッド工業だった・・・。

一方、アルフレッド工業では、合流したアンファースの技術者達と共に、
エルヴズユンデの修理が急ピッチで進められていた。
「・・・俺も出るよ!人手が足りないだろ!?」
ランが、オメガソルジャーに乗って叫ぶ。
「駄目だ!あれは、先日のグレートラーゼルとも桁が違うんだぞ!!」
「けど、時間が稼げなければ、
エルヴズユンデの修理が間に合わなければ、あれには勝てない!!」
「し、しかし・・・お前はまだ若い・・・。」
アルフレッドが、ランの気迫に押されながらも言う。
「・・・そうか・・・心配してくれてるんだよね・・・。
・・・分かってる、今死ぬつもりは無いよ。」
「分かった。くれぐれも無理はするな。」
「・・・気をつけて。」
ギルティアが手を振る。
「ああ、任せとけ!!」
オメガソルジャーが空へと飛び立つ。
「小生が思った以上に、ランは強かったのですな・・・。」
「・・・ええ、彼は間違いなく、強いです。」
ギルティアが、笑顔で頷いた・・・。

一方、フレアドイリーガルと、ジェネラルZXが、異形相手に攻撃を仕掛けていた。
「一体、何なんだ!この化けもんは・・・!!」
ジェネラルZXが、榴弾砲を放つ。
直撃するも、異形は揺るぎもしない。
「あの王者決定戦の時もそうだが・・・。
最近、ここの治安が悪くなってはいないか・・・?」
フレアドイリーガルが剣を叩き込む。
しかし、傷は出来るが直ぐ再生されてしまう。
「・・・あ、それは多分ウチらのせいだ、すまん。」
「おっと、そうだったな・・・だが、これからはもっと俺も楽しめそうだ・・・!
・・・もっとも、こいつに全て破壊されなければ、だが。」
そして、レディオスが、苦笑する。
「・・・しかし、何処に向かっているんだ?こいつ。」
藤木が尋ねる。
「知らんな。この先にあるのは・・・!!」
レディオスが、気付く。
「・・・アルフレッド工業・・・ようやく施設が完全に復旧したと聞いていたが・・・。」
「・・・まさか!!」
二人の顔色が変わる。
「それが目的か、こいつは・・・!!」
「しかし、全く歯が立たない・・・この俺達が、だぜ・・・!?」
「面白いじゃないか・・・これくらい絶望的なほうが、俺は好きだがな・・・!!」
こんな状況でも、レディオスは、ニヤリと笑っていた。
しかし、異形は、確実に歩をアルフレッド工業に向けて進めていた。

一方、その遥か遠くに、アンファースは仁王立ちしていた。
「・・・こいつを撃つ時はブースターは使えん・・・。
・・・彼奴の射程内に入ったら、回避は殆ど出来んだろうな・・・。
・・・だが、威力は折り紙つきぞ・・・!」
シリウスが、二機に通信を入れる。
「秘密兵器を使用する!巻き込まれたく無くばそこから下がれィ!!」
「シリウス社長か!?その距離から狙撃する気か・・・!?」
「言ったはずぞ!秘密兵器だと!!」
シリウスがニヤリと笑う。
二機が下がったのを確認し、アンファースが、右腕に砲を構える。
「・・・対異形用兵装、デモンズ・スローター・・・発射!!」
引き金が引かれたと同時に、まるで雷が落ちるような音が鳴り響き、砲弾が異形に直撃する。
異形が、仰け反る。
「まだまだ!どんどん行くぞ!!」
次々に砲弾が異形に襲い掛かる。
「凄い威力じゃねぇか!一体何だ、その武器は!」
藤木が尋ねる。
「何、以前発注された超電導粒子加速器の設計図を元に、
超電導レールガンというものを作ってみたのだよ。
効くかは未知数だったが・・・効くならば、こちらのものだ!!」
アンファースが更に砲弾を撃ち続ける。
「今度こそ決着をつけようでは無いか、ラーゼル!!」
「ム、ググ・・・ク、クク・・・フハハハハハハハハハ!!!」
異形の笑い声が、炎に包まれた工業地帯に響く。
「良く気付いたな・・・シリウスよ・・・!!」
「しゃ、喋りやがった・・・!」
藤木が呟く。
「我は力を手に入れた・・・そう、貴様らを絶望のどん底に叩き落すに足る力を!!」
「はたして、それはどうだろうか・・・!?
現に、我が一撃でお主は怯んだ・・・倒せない相手では無いぞ!!」
シリウスが、ニヤリと笑う。
「試してみるか・・・?老いぼれの、虫けら風情が!!」
異形となったラーゼルが、その歩をアンファースの方へ向ける。
「そうだ、それで良い!この儂と勝負せよ!!」
「お、おい、シリウス社長!何て無茶を・・・それに、あれが、社長だと!?」
藤木が叫ぶ。
「うむ、間違いない。あの物言い、紛れも無く、奴だ・・・!!」
「・・・社長・・・いや、ラーゼル・・・!!
・・・そこまで落ちやがったかァァァァァァァァァ!!!!」
ジェネラルが剣を構え、突進する。
「力だァァァァァァァ!!!」
ラーゼルが振り向き、両腕が、グレートラーゼルの巨大砲へと変わる。
「何ッ!?」
「・・・させん!!」
アンファースが、再びラーゼルに砲弾を叩き込む。
ラーゼルが仰け反り、照準が外れるが、砲弾の一発がジェネラルに直撃する。
「ぐおっ・・・出力が、桁違いに上がっている・・・!?」
半身を吹き飛ばされ、ジェネラルが倒れる。
「・・・何て奴だ・・・!」
「藤木、大丈夫なのか!?」
「ああ、何とか生きてるぜ・・・戦えそうには、無いがな・・・。」
「いつもいつも・・・俺の邪魔を!!」
フレアドイリーガルが、剣で斬り込む。
「虫けら風情が・・・退け!!」
ラーゼルの肩から、大量のミサイルが放たれる。
「何ッ!?」
フレアドイリーガルがそれを回避するが、近づけない。
「ぬぅ・・・何という火力・・・グレートラーゼルをそのまま強化したような敵か・・・!!」
アンファースが、砲弾をリロードする。
「・・・だが、負けぬぞ・・・!!」
そして、再び砲弾を放つ。
「シリウス社長!援護するよ!!」
アンファースの後方に、オメガソルジャーが降りる。
「アルフレッド社長の孫か!?」
「ああ!」
「なら、少々危険だが、あの化けものの後方に、一機やられておる!
そのパイロットの救助を頼みたいが、出来るか・・・!?」
「分かった、行ってくる!その代わり、あの化け物の相手は任せるよ!!」
再び、オメガソルジャーが飛び立つ。
「うむ!任せておけい!!」
アンファースが、再び砲弾をラーゼルに叩き込む。
ラーゼルが、大きく仰け反る。
「今だッ!!」
オメガソルジャーが、ラーゼルの横を抜け、ジェネラルの残骸の所へ降りる。
「藤木、助けに来たよ!」
オメガソルジャーが手を差し出す。
「ああ、すまねえ・・・しかし・・・ソルジャーが、随分と強力になったもんだ・・・。
・・・お前、名前は?」
「ラン!ラン=フレイヘリヤル!」
「成る程、アルフレッド社長の孫か・・・優秀な、いい孫を持ったもんだ。」
藤木が、そう言って笑い、オメガソルジャーの手に乗り、コクピットに乗り込む。
「・・・頼みがある。
・・・この戦いの間、この機体を貸してくれ。」
「え、ええ!?」
藤木の突然の申し出に、ランが驚く。
「心配するな、もし破壊されでもしたら、修理費は俺が持つ!!」
「そ、そういう問題じゃ・・・いや、少なくとも、俺よりも上手く扱えるか・・・。
こいつは俺の相棒だよ、くれぐれも大切に扱ってくれ!!」
「だが、俺だって、俺の相棒を破壊されてブチギレてるんでな!!
少々、荒っぽくはなるぞ・・・?」
藤木が、ニヤリと笑う。
ランが、後ろを見る。半身を吹き飛ばされたジェネラルが倒れている。
「そういう事なら・・・分かった!
・・・藤木、あんたの相棒の敵討ち、存分に行け!!」
「おう!」
オメガソルジャーが飛び立つ。
ラーゼルが、そちらを狙って巨大砲を撃つ。
「手が分かっていれば、対処のしようも・・・ある!!」
オメガソルジャーが、それを回避し、両腕の刃をラーゼルに叩き込む。
更に、それに追い討ちをかけるように、巨大砲にアンファースが放った砲弾が直撃する。
「貴様ァ・・・!!」
異形となったラーゼルの鋭い目が、アンファースを睨む。
「そうだ、それで良い・・・!!」

「俺を忘れてもらっては困るな・・・!!」
ラーゼルの肩部分に、剣が叩き込まれる。
フレアドイリーガルだった。
「貴様・・・あれだけのミサイルを受けて、無事だったのか・・・!!」
「お前達がどうやっても倒す事が出来なかったこの俺が、
そう簡単にやられると思ったか・・・!?」
レディオスがニヤリと笑う。
「ク、ククク・・・ならば、これでどうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突如、ラーゼルの身体から凄まじい衝撃波が放たれる。
「何だと!?」
「うおっ!?」
オメガソルジャーは咄嗟に距離を離して回避したが、
衝撃波の嵐が、回避し損ねたフレアドイリーガルを飲み込む。
「ぐ、おおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
フレアドイリーガルが吹き飛ばされ、建物に叩きつけられる。
戦闘続行は可能か、いや、レディオスは、生きているのか。
「レディオス!!無事か!?」
「う、ぐ・・・成る程、化け物は、化け物、という訳か・・・。
・・・機体は何とか動けるが・・・剣、アサルトライフル、共に破壊。
・・・ダガーでは、奴の相手は出来ないか・・・。」
「・・・藤木、ラン!そちらは無事か!?」
シリウスが叫ぶ。
「ああ、オメガソルジャー・・・ソルジャーがここまで化けるとはなァ・・・。」
「そこまで化けてる?」
ランが尋ねる。
「おう・・・こいつぁ、ラーゼルの最新型以上の機動性だぜ・・・!!」
「・・・おい、藤木!」
レディオスが、叫ぶ。
「何だ?」
「ジェネラルの榴弾砲は無事か!?」
「おう・・・まさか、使う気か・・・!?」
「ああ、貸してくれ・・・!」
レディオスが頷く。
「・・・おう、まだ、弾数はかなり残っている筈だ。」
「分かった!」
フレアドイリーガルが、ジェネラルの榴弾砲を構える。
「だが・・・このままでは奴に対して決定打を与えられない!どうするんだ、シリウス社長!!」
藤木の声からも、焦燥が感じられる。
「残りリロードは一回・・・撃ち尽くせば、あとはこちらも奥の手しか残っておらんが・・・。
・・・まだか!?お嬢ちゃん!!」
アンファースが、もう一度、砲弾をリロードする。

一方、アルフレッド工業では、ギルティアも修理に加わっていた。
「間に合わせなければ・・・!!
このままでは、私の護るべきものが失われる・・・!!
許されない・・・そんな事は!!
それでは、私がここに存在する意味など無いのだから・・・!!」
「修理はもう数分で完了します!
すぐに出撃できるように、コクピット内で待機してください!」
アルフレッドが叫ぶ。
「了解です!くれぐれも、急いで!!」
ギルティアが、コクピットに乗り込んだ。

既に、アンファースにも巨大砲が届く距離まで、ラーゼルは迫ってきていた。
「消え失せろ!虫けら共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ラーゼルが、アンファースに向けて巨大砲を放つ。
「何のッ・・・お主には負けぬ!!」
アンファースが、それと真正面から撃ち合いを続ける。
巨大砲の直撃を受け、アンファースの肩アーマーが吹き飛ぶ。
「何のこれしき!!」
アンファースの左足が吹き飛ぶ。
「儂を、その程度で倒せると思うな!!」
バランスを崩すが、左腕で砲撃姿勢を何とか保つ。
アンファースが、更に撃ち続ける。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「い、幾らなんでも無茶だぜ!下がれ!シリウス社長!!」
思わず、藤木が叫ぶ。
「しかし、見よ!!」
「何!?」
シリウスに促され、見ると、ラーゼルの巨大砲に軋みが生じている。
アンファースの狙撃で、巨大砲は両腕共に既にガタガタだった。
「・・・そこを狙い、攻撃を叩き込め!!」
「ああ、任せろ!!」
「おう!行くぜ!!」
フレアドイリーガルが、榴弾砲を軋む巨大砲に叩き込み、
オメガソルジャーがもう一方の巨大砲に刃を叩き込む。
次の瞬間、連射されていた巨大砲が、暴発した。
それは、ラーゼルの両腕が吹き飛ぶ事と同義だ。
「よし!」
「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ラーゼルの表情が苦痛に歪む。
「ぬっ!?」
凄まじい衝撃波が再び放たれる。
フレアドイリーガルとオメガソルジャーは退避したが、
脚部をやられたアンファースはその場でそれを防御する。
「ぬぅぅぅぅぅ・・・!!」
アンファースも、既に動けるのが不思議とも言えるほどの損傷を負っている。
コクピットでも、シリウス自身も負傷していた。
「まだまだァ!!」
しかし、アンファースは再びデモンズ・スローターを構える。
「シリウス社長!逃げろって!!」
「まだ・・・まだ、逃げる訳には行かぬ!!」
そして、もう一度引き金を引く・・・が、砲弾が出ない。
「・・・弾切れか・・・こんな時に・・・!!」
「どうやら、ここまでのようだなァ・・・死ね!シリウス=アンファース!!」
ラーゼルが、再び衝撃波を放とうとした次の瞬間だった。
「・・・待ちなさい!!」
閃光が、アルフレッド工場から解き放たれる。
そして、次の瞬間、その閃光がラーゼルに向けて突進する。
ラーゼルの巨体が、大きく引きずられ、吹き飛ばされる。
「お、おお・・・!!」
そこには、エルヴズユンデが剣を構えて立っていた・・・。
四枚の翼と、左腕の爪は本来の姿には戻っていないが、
その力は、少なくとも今までフルメタルコロッセオで戦ってきた時とは桁が違っていた。
「・・・シリウス、ありがとう・・・私を信じていてくれたのですね・・・。」
「ふふ・・・何、お主は、儂に『夢』を見せてくれた・・・。
・・・見せてくれ、儂にとっての『夢の世界』の力を。」
シリウスは、ニヤリと笑い、そう呟いた。
「・・・ええ。」
ギルティアは頷くと、剣を構えなおす。
「藤木さん!レディオス!下がってください!ここは私が引き受けます!!」
「な、何だァ・・・エネルギー反応が振り切れてるぜ・・・。」
藤木が驚く。
「・・・分かった、お手並み拝見と行こう・・・!!」
オメガソルジャーとフレアドイリーガルが、後方に下がる。
ラーゼルが起き上がる。
「ルギルナ・・・か・・・無駄だ、我を止める事など出来ぬぞ!!」
ラーゼルの肩から、再び凄まじい量のミサイルが放たれる。
「プリズナーブラスター・・・バァァァァァァァァストッ!!!」
エルヴズユンデの胸部から放たれたブラスターがバラバラに拡散し、
一発一発のミサイルを確実に叩き落した。そう、全弾、である。
凄まじい爆発がラーゼルとエルヴズユンデを隔てるが、
エルヴズユンデはその中に突っ込む。
「続けていきます!!」
エルヴズユンデが、ラーゼルに再び剣を叩き込む。

一方、アンファースのコクピットの中で、シリウスは感嘆の声を上げていた。
「素晴らしい・・・これが、世界を救ってきた力か・・・!!
・・・さて、と・・・ここで見ている事も出来るが・・・。」
シリウスは、ニヤリと笑った。

ラーゼルが、口を開く。
凄まじいエネルギーが集まる。
「消え去れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
そのエネルギーが、エルヴズユンデ目掛けて解き放たれる。
「その程度・・・!!」
しかし、放たれたエネルギーは、エルヴズユンデの剣の一振りに叩き落された。
「何故だ!我がこの力は、全てを喰らい尽くす力だ!!誰にも阻めぬ力だ!!」
「当然です・・・それを阻むために、私は存在しているのですから・・・!!」
ギルティアは、ニヤリと笑った。
「ぬぅぅぅぅ・・・おのれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ラーゼルの両腕の巨大砲が、再生する。
「消えろ!消えるのだこの虫けらがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「無駄で・・・」
ギルティアの言葉を、遮る者があった。
「・・・往生際が悪いぞ、ラーゼル!!」
見ると、アンファースが再びデモンズ・スローターを構えている。
「もっとも、ここで切り札を切る、儂も人の事は言えぬか・・・。
お嬢ちゃん、すまぬが、儂にもまだ、もう一枚、最後の切り札が残っておるのだ。」
アンファースが、左腕に剣を持ち、自らの腹部をその剣で地面に突き刺す。
恐らくは、左足が使えない状況を補う為に、
剣を、砲撃の反動を止めるアンカーにしたのだろう。
「・・・もう一度、手番を貰えまいか・・・?」
砲身から、凄まじい光が漏れ出している。
「・・・分かりました。」
ギルティアが頷き、エルヴズユンデが射線を開ける。
「・・・射線クリア!
デモンズ・スローター・・・粒子加速砲モード・・・エネルギー充填完了!!
ラーゼルよ・・・吹き飛ぶが良い!!!!」
ラーゼルよ・・・吹き飛ぶが良い!!!!
そして、次の瞬間、砲身から放たれた光が、ラーゼルを飲み込む。
「ぐ、おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
そして、その一撃はラーゼルを、工業地帯の外、遥か遠くへと吹き飛ばした。
「・・・見事、です。」
ギルティアが呟く。
「何、これをやるとジェネレータが完全に死ぬのでな・・・。
・・・時間稼ぎという目的の関係上、今まで使えなかったのだよ。」
自分で言ったとおり、機能を停止したアンファースのコクピットで、シリウスが笑う。
「さぁ、止めは任せたぞ!!」
「・・・はい!」
エルヴズユンデが、ラーゼルの方へと突っ込んでいく。
「こんな事があってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ラーゼルが、ミサイル、巨大砲、そして、衝撃波、口からのエネルギー波を同時に放つ。
「プリズナーブラスター・・・バァァァァァストッ!!!」
エルヴズユンデの胸部から、連続して放たれたブラスターが、
エルヴズユンデの周囲に弾幕を展開する。
ミサイルと巨大砲が、掻き消される。
口からのエネルギー波は、剣の一振りで真っ二つになった。
「私は、私の使命を・・・私の存在意義を・・・全力で果たすだけです!!」
エルヴズユンデが、衝撃波に正面から突っ込む。
バラバラに拡散していたブラスターが、剣に集まる。
そして、剣が赤熱化を超え、光り輝く。
「・・・ラーゼル!これで・・・終わりですッ!!!!」
剣の一閃が、ラーゼルを貫く。
「グ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
それと同時に、剣にこめられた熱量が開放される。
ラーゼルは、開放された熱量が起こす爆発により、斬られた部分から消滅していった。
「・・・願わくば、汝の罪が祓われん事を・・・。」
ギルティアは、そう呟いた・・・。

「・・・申し訳ありませんが、私はここで失礼致します。」
ギルティアが、アルフレッドに通信を入れる。
「・・・ファラオ店長と、ルークさんに合流するのですね・・・。」
「ええ・・・ラーゼルが異形化した事は、前例の無い事態です。
急ぎ、ファラオ店長にも報告せねば。
・・・それと、今回の戦いに立ち会ってくれた戦友達に、
必要があれば事情を説明してあげてください。」
ギルティアは、そう言って笑った。
「承知しました・・・それと、この世界を救ってくれて、本当にありがとうございました。」
アルフレッドが頭を下げる。
「いえ、私は私の使命を果たしただけです。」
「ギル姉、行っちゃうんだね・・・。」
ランが、通信を入れる。
「寂しそうな顔をしないで・・・。
別に今生の別れという訳でもありません・・・。
・・・縁があれば、きっとまた会えますよ。」
「・・・そうだね!ギル姉、また、いつでも会いに来てよ、待ってるからな!」
ランに、笑顔が戻る。
「おい、お前の機体、一体どうなってんだ?さっきの戦い、凄すぎたんだが・・・。」
藤木が、笑顔で尋ねる。
「アルフレッドさんが詳しい事を説明してくれる筈です。
・・・この戦いに立ち会ってくれた皆さんなら、信頼できる・・・。」
「・・・分かった!おい、ラン、工場に戻るぞ!!」
「ああ!それじゃ、またね、ギル姉!!」
オメガソルジャーが工場の方へと飛んでいった・・・。
「『その先にあるもの』か・・・フッ、成る程・・・。
・・・確かに、お前は最強の先にいる。」
レディオスが、静かに呟く。
「・・・さらばだ。
お前が何処から来て、何処へ行くのかは知らんが、
・・・お前の旅に、幸多からん事を。」
そう言うと、新たに完成したフレアド工業の工場へと、
フレアドイリーガルは帰還していった・・・。
「ありがとう、レディオス・・・。」
ギルティアが、静かに呟いた。
「・・・お嬢ちゃん、行くんだな?」
シリウスが通信を入れる。
「ええ。」
「・・・どうだ?儂の対異形兵装、デモンズ・スローターは。」
シリウスは、そう言ってニヤリと笑った。
「素晴らしい威力でした・・・。
ジェネレータの出力がもっと高ければ、
あれは確かに実用性のある対異形兵装ですよ。
しかし、まさか、あそこまでの代物をこっそりと作っていたなんて・・・。」
「彼奴のグレートラーゼルだって、そうだったであろうが・・・。」
「・・・でしたね。」
ギルティアは苦笑した。
「・・・何処ぞの宇宙か世界で、また会おう。」
「え?」
「いや、何でもない・・・そうなれば良いなと、思っただけだ。」
シリウスは、そう言って笑った。
「・・・元気でな。」
「ええ!シリウスも、いつまでもお元気で!」
「うむ!」
アンファースの胸部から出てきたシリウスが、手を振っていた。
ギルティアはそれに応え、エルヴズユンデで手を振る動作をしてから、
境界空間へと飛び立っていった・・・。

夜明けは、もうすぐだった・・・。

続く

地平の旅人Act.31 一時の休息の影で

   Act.31 一時の休息の影で

王者決定戦の次の日、ギルティアは、アルフレッド宅の屋上で、
ファラオ店長が今いる宇宙へと飛び立つ、ルークの見送りをしていた。
「私も、エルヴズユンデが境界空間に突入可能になり次第、すぐ合流します。」
「了解した。」
ルークが頷く。
「見張り、本当にお世話になりました・・・。」
アルフレッドが、ルークに頭を下げる。
「いや、こちらこそ、役に立てたようで、何よりだ。」
ルークが、笑顔でそれに答える。
「・・・そろそろ、行くとしようか・・・また会おう、ギルティア。」
「ええ・・・ファラオ店長によろしく伝えておいてください。」
「ああ。」
ルークが、飛び立つ。
「では、また会おう、皆!!」
そして、ルークは空間の穴に突入していった・・・。

「・・・さて、施設の整備の事ですが、どれくらいかかりますか?」
ギルティアが尋ねる。
「ええ、施設の整備に三日、エルヴズユンデの修理に二日・・・と言った所ですか・・・。」
アルフレッドの答えに、ギルティアが頷く。
「了解しました・・・私に何か出来る事はありますか?」
「いえ、ここまでで十分以上に修理費は支払っていただけましたのでね。
・・・後は、今までの戦いの疲れをゆっくりと癒してください。
また、これからもずっと、戦うのでしょう?」
「・・・分かりました。」
ギルティアが、屋上から下の階に降りる。
既に、アルフレッド宅の後ろの工場は、工事が始まっていた。
ランも、どうやらその工事を機体で手伝っているようだ。
「・・・さて、私はどうしましょう・・・。」
ギルティアが、再び外に出る。
「・・・ふふ。」
ギルティアが、静かに笑った。
以前、シリウスが、今度遊びに来いと言っていた事を思い出したのだ。
「・・・行きますか。」
ギルティアは、アンファース・インダストリアルへと歩き出した・・・。

アンファース・インダストリアルの入り口に、
先日シリウスが自転車で突っ込んだ跡がしっかりと残っている。
「・・・何でしょう?これ・・・。」
ギルティアが首を傾げる。
取り敢えず、構わずにアンファース・インダストリアルの扉を叩いた・・・。
すぐに、社長室に案内された。
「おお、お嬢ちゃんか!」
ラーゼルが、それを笑顔で出迎える。
「アンファースの修理は大丈夫なのですか?」
「うむ、昨日のラーゼルの暴走のおかげで、
ラーゼル重工自体が解体によって縮小されることになったらしいぞ。」
「おお、そうですか。」
「それは、我が社にとっても大きなプラスだ。
その功績のおかげか、何か、社員達に今日はゆっくりしていてくれ、と言われてな。」
シリウスが、そう言って笑った。
「・・・で、規模を縮小されたラーゼル重工の、
新しい社長として名乗り出たのが、何と、藤木らしい。」
シリウスが、笑顔で言う。
「そうですか、藤木さんが・・・彼なら、あの会社を良い方向へと導いてくれそうですね。」
「うむ、そうあって欲しいものだ。
それと、フレアド工業が、今回、ラーゼル重工から再び独立して開業するらしい。
そう、フレアドイリーガル、レディオスの所属していた企業だ。」
「それは・・・素晴らしい!
つまり、フレアドイリーガルがようやく枷から解き放たれるのですね?」
ギルティアが笑顔で尋ねる。
「そういう事だ。これからは、最初から全力になる。
・・・結構じゃないか。ラーゼルの横槍がなくなったおかげで、
今回ラーゼルから独立したり、細々と生き延びていた企業達が、
次々とフルメタルコロッセオへの参加を表明している。
・・・昔の活気が、戻ってきたぞ・・・!」
シリウスがニヤリと笑う。
「・・・これも、お嬢ちゃんがフルメタルコロッセオを引っ掻き回してくれたおかげだ。
・・・感謝してもしきれない・・・本当に、ありがとう。」
「いえ、私は私の使命の為に戦っただけですよ・・・。」
ギルティアが、笑顔で答える。
「流石お嬢ちゃんだ・・・そう答えると思ったぞ。
・・・おっと、それと、一つ気になる事があるんだが・・・。
・・・ラーゼルの遺体は、あの機体の中からも発見されていないらしい。」
「・・・それは、本当ですか?」
「うむ。」
シリウスが、真剣な表情で頷く。
「・・・エルヴズユンデの修理を急がねばなりませんか・・・。」
「まぁ、もっとも、今の奴は会社という後ろ盾も失っておるのだ。
・・・たとえ生きていたとて、結局、何の力も無い。」
「それも、そうですね・・・。」
ギルティアが頷いた。
「そう言えば、異形とかいう輩の事、詳しくは聞いていなかったが・・・
もし良ければ、お主の旅の話をもう少し詳しく聞かせてはくれまいか?」
「そういうと思っていました・・・ええ、私も、そのつもりで来ましたよ。」
ギルティアの答えに、シリウスの眼がキラキラと輝く。
「おお、それはありがたい!!」
そして、シリウスが、社長室の棚の中から酒瓶を取り出す。
「まぁ、チビチビ飲みながら話をするとしよう。」
「ええ・・・では、まずは私の故郷の事から・・・。」
ギルティアが話を始めると、シリウスはそれを興味深そうに聞いている。
こうして、ギルティアは、自分の旅の始まりから、今に至る旅の話をした。
「興味深いな・・・成る程、異形というのは人間が変異したものか・・・。
道理で、性質が悪いわけだな・・・。」
シリウスが頷く。
「ええ、それに、色々な原因によって、
今も異形はあちこちの世界に降り注いでいます。」
「この世界にはおらんのか?」
「・・・集まりやすい宇宙、世界と集まりにくい宇宙、世界があります。
この世界は、かなり集まりにくいです。
もともとの宇宙群の構造的に集まりやすいか集まりにくいかと言う部分で私は判断していますが、
どうやら、それ以外の要因でも、
・・・異常に集まりやすい場所と集まりにくい場所が存在するようです。
それに、原因は未だに不明ですが・・・この間、今までの異形とは全く異なる異形と遭遇し、
辛うじてそれを撃破しました。」
「うむ。」
シリウスが頷く。
「・・・先程説明してくれた、お嬢ちゃんが無理をして倒した異形の事だな?」
ファラオ店長とルークとで戦った、彼の異形の事である。
「・・・はい。核を破壊する事で辛うじて撃破する事が出来ましたが、
エルヴズユンデを先に修理する必要があったのは、
あのような異形との戦いの際には、機動兵器が必須であると判断したからです。」
「・・・聞きたいが、アンファースは、異形相手にどれだけ戦えるのだろうか?」
シリウスが、唐突に尋ねる。
「そうですね・・・ただの大型の異形程度であれば、難なく撃破出来ると思いますよ。
しかし、統括異形・・・その世界の異形を統括する強大な異形や、その『異なる異形』相手は・・・。」
「そうか・・・やはり、世界は広いな・・・。」
シリウスは、そう言って笑った。
そうこう、会話をしている内に、時間は既に夕方になっていた・・・。
「・・・さて、では私はこれで失礼します。」
「うむ、面白い話を聞かせてくれたことに感謝する。
・・・また、いつでも遊びに来てくれ。」
シリウスが、笑顔で手を振る。
「ええ、それでは、またお会いしましょう・・・!」
ギルティアは、アルフレッド工業に戻った・・・。

シリウスは、社長室に一人残った。
「ふむ・・・異形を相手に戦える装備というコンセプトで、
新しい武器でも考えてみるとしようか・・・。」
そして、静かに言葉を続ける。
「・・・我が愛機アンファースも、新型の開発競争に、力負けを始めているしな・・・。
そろそろ、潮時なのかも知れんな・・・まぁ、良い・・・今考えても始まらぬ事だ・・・。」
シリウスは、図面用紙を広げ、設計図を書き始めた・・・。

そして、それから三日後、アルフレッド工業は、
かつての爆破事件以前の姿を完全に取り戻していた。
「これで、ようやく修理を始める事が出来ます。」
アルフレッドが、笑顔で言う。
「おめでとうございます、よろしくお願いしますね。」
「ふぅ・・・設備も整ったし、俺もオメガソルジャーをまた改造しようかな・・・。」
ランが、呟く。
「そう言えば、ランはフルメタルコロッセオに参戦しないのですか?」
「え?俺が?」
ランが聞き返す。
「・・・ええ、先日の戦いぶりから考えても、十分上位を狙えますよ。」
「そう、か?・・・ギル姉がまた別の宇宙に行ったら、
アルフレッド工業から参戦する機体がいないのは寂しすぎるしな。
・・・最強のメカニック・・・よし、軽く一歩、踏み出してみるか!!」
ランが、笑顔で言い放つ。
「ええ、その意気です!!」
「あ、それならさ・・・。」
「はい?」
「オメガソルジャーのAIに、
フルメタルコロッセオで収集したギル姉の戦闘データを入れても良いか?」
そう、オメガソルジャーの操縦システムを考えると、
それをする事で一気に戦闘能力を増強する事が出来る。
「ええ、もちろん。私の戦いで手に入れたデータは、アルフレッド工業の所有物です。」
「・・・ありがとう!」
ランが、笑顔で頭を下げる。
「その代わり、エルヴズユンデの修理、頑張ってくださいね!」
「ああ、機械部分は完璧に修理してみせるよ!」
ランが、そう言って工場の方へと駆け出していった・・・。
「おいおい、そう焦るな、ラン。」
アルフレッドが、駆け出したランに続く。
それを微笑まし気に見届けると、ギルティアは屋上に上る。
「・・・私も、早く使命に復帰しなければ・・・。」
ギルティアは、静かに呟いた・・・。

町外れのジャンク山に、あの男は潜伏していた・・・。
「このままで、終わらせるものか・・・。
あの忌々しき戦士達に、この恨みを・・・絶望と恐怖を、味わわせてくれる・・・!!
・・・グレートラーゼルを超える力が・・・力があれば・・・!!」
男の周囲には、グレートラーゼルの残骸が散乱している。
『・・・力を欲するか?』
何処からか、声が聞こえる。
「・・・誰だ!?」
男が周囲を見回す。
そこには、まるで黒い影のような姿をした『何か』がいた。
『貴様は・・・全てを喰らい尽くす力を欲するか?』
その問いに対して、男は答える。
「・・・良いだろう、貴様が誰であろうと構わん。
その力とやら、もし本当に我が物と出来るのならば・・・。
悪魔にでも、化け物にでも・・・魂を売ろう!!」

『よろしい、ならば力を与えよう・・・全てを滅ぼすに足る、力を・・・!!』

影は、そう言うと、姿を消した・・・。

続く

地平の旅人Act.30 焔光と斬光

   Act.30 焔光と斬光

戦闘開始を告げる言葉と同時に、二機の剣が正面からぶつかる。
「嬉しいぞ、あれだけの戦いの後、俺に付き合ってくれるとはな・・・!!」
「ふ、私の長い長い戦いの旅路は伊達ではないのです・・・。
・・・この程度で戦闘不能にはなりません・・・!!」
エルヴズユンデが再びフレアドイリーガルを押し飛ばそうとする。
「何度も同じ手は喰わん・・・!!」
フレアドイリーガルが、一歩退く。
勢い余ったエルヴズユンデの剣が、地面に叩き込まれる。
「隙あり、だ!!」
「なんの!」
フレアドイリーガルが振り下ろした剣を、
エルヴズユンデが左腕のクローで受け止める。
「私は、負けられないのです・・・!」
エルヴズユンデのクローが、フレアドイリーガルの剣をへし折る。
「剣を折られただと・・・!?だが、まだまだ!!」
フレアドイリーガルが、ダガーを構え、真っ直ぐに突進する。
エルヴズユンデが、剣を振り下ろす。
「私は、目的を果たす・・・そのために、私は、今此処にいるのです・・・!!」
「ならば、お前の目的は何だ!!」
振り下ろされた剣を回避し、フレアドイリーガルがダガーを叩き込む。
「我が愛機を、修理する事です・・・!!」
叩き込まれたダガーを、剣の振りの反動を利用して紙一重で回避する。
今まで、この世界の住人を相手に、自らの真実を語る事は無かった。
しかし、王者となってからこの場所を去るというのなら、理由はいずれ告げねばならない。
「お前の機体を・・・修理する事だと・・・!?」
フレアドイリーガルが、アサルトライフルを放つ。
「修理費を支払う代わりに、私はこの闘技場に参加した・・・!」
エルヴズユンデが、高速で後退する。
「それに、ラーゼルの妨害を何とかした上で修理を無事完了するには、
どうしても、設備の修理と増強が必要だった・・・!」
そして、左腕のレーザー、ビーム砲を放つ。
「それが、お前がここに参加した目的か・・・成る程、負けられない訳だ・・・!
だが、そのような事、俺には関係ない!!
さぁ、俺に勝利するというのならば、やって見せろ!!」
フレアドイリーガルが、折れた自らの剣の刃を、
そのレーザー、ビーム砲の雨に向けて投擲する。
「何・・・!?」
刃が、レーザー、ビームの雨をかき消し、エルヴズユンデの肩アーマーに突き刺さる。
「隙あり、だ!!」
フレアドイリーガルが一気に距離を詰める。
「まだまだ、です!」
エルヴズユンデが、ブラスターを放った。

二人の戦いを、アルフレッドとシリウスが同じ場所で観戦していた。
「・・・アルフレッドよ、今彼女が言った事、本当なのか?」
シリウスが尋ねる。
「ええ、本当です・・・あの機体は、本来、彼女が我が会社に持ち込んだもの・・・。
戦いで大破し、胸部だけになっていた機体を、『応急修理』したものです・・・。」
「応急修理だと・・・なら、あの機体はまだ、完全じゃない、と・・・!?」
シリウスが驚いて聞き返す。
「その通り・・・本来のエルヴィントは、
今の、いや、我々ですらも完全に修理を完了することはできない程の機体なのです・・・。」
「なら、その本来の力は・・・!?」
「・・・詳細は、もし、それを聞く勇気があるのでしたら、
この戦いの後、彼女に直接真相を尋ねてください。
それが真実かを、そしてもし真実ならば、
自分の耳を疑いたくなるような事実が聞ける筈です。」
アルフレッドは、そう言って苦笑する。
「・・・分かった。」
シリウスは、静かに頷くと、再び黙って二機の戦いを見守り始めた。

フレアドイリーガルは、至近距離でブラスターを強引に回避する。
「今です・・・!」
エルヴズユンデが、フレアドイリーガルの背中のブースターを狙って剣を叩き込む。
「何ッ!?」
フレアドイリーガルのブースターが真っ二つになる。
エルヴズユンデが、反転して蹴りを叩き込む。
フレアドイリーガルが、叩き飛ばされて闘技場の壁に突っ込む。
「・・・まだまだ!!」
フレアドイリーガルが、更に追撃をかけようとしたエルヴズユンデに、それを利用してダガーを叩き込む。
エルヴズユンデの背のブースターが大破する。
このまま戦闘を長引かせては、泥仕合になりかねない。
「次の一撃で、決めます・・・!」
「名残惜しいが・・・仕方あるまい・・・!」
二機が、真正面から向き合う。

二機が、同時に踏み込む。
「たあああああああああああああああああっ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
二機が、交差した。
「・・・ぐっ・・・。」
エルヴズユンデの左腕が落ちる。
メイン動力が落ちるが、背に搭載された動力が、
ウィングの大破にもかかわらず、何とか持ち応えていた。
「ふ・・・楽しかったぞ・・・!!」
フレアドイリーガルが、真っ二つになり、倒れる。
「・・・私の・・・勝ちです。」
エルヴズユンデが、剣を掲げる。

数秒間の静寂。
実況の男が口を開く。
「まさに壮絶!まさに、史上最高の王者決定戦だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ルギルナ=燐紅=御果、レディオス=アイルレードを倒し、
ついに、チャンピオンの座を手に入れたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
実況の男の叫びに、残された皆が拍手で応える。
人数が少なかったので声援は少々寂しかったが、ギルティアがコクピットから出てくる。
「・・・こちらの方が、私らしいです。」
そう言って微笑んだ。
そして、エルヴズユンデから降り、既に機体から出てきていたレディオスの方へと歩く。
「・・・良い戦いが出来ました・・・ありがとう。」
ギルティアが、手を差し出す。
「ああ、今までの戦いの中で、一番楽しい戦いだったぞ・・・。」
レディオスが、それに応える。
二人は、固く握手した。
その二人の下へ、ランやアルフレッド、シリウスが走ってくる。
「さっきの戦いの被害は尋常ではなかったが、
取り敢えず、今日だけは存分に勝利を祝おうではないか!!」
シリウスが、笑顔でそう言う。
・・・ギルティアが、周囲を見回す。酷い損害だ。
「・・・ラーゼル・・・。」
しかし、ギルティアは静かに頷く。
「・・・分かりました。今は、まずは勝利を祝う事にします。」

そうして、最後の戦いを見届けた者達で、アルフレッド工業の工場を使って祝勝会が開かれる事になった。
「やったな、ギル姉!」
ランが笑顔で言う。
「いえ、今回はランの方が、あの時の戦いではお手柄でしたよ。
・・・見事な機体、見せて頂きました。」
「へへっ・・・腕の無さは機体の設計で補う、まぁ、今の俺にはそれしか出来ないからね。」
ランが、そう言って苦笑した。
「いえ、それが出来るのも、立派な腕ですよ。」
ギルティアは、そう言ってランの頭を撫でる。
「アンファースが、あの戦いを直に見届けられた事を誇りに思う、と言っておったぞ。
・・・そして、儂もな。」
シリウスが、そう言ってニヤリと笑う。
「ええ・・・まさか、ラーゼルがあのような手を使うとは思いませんでしたが・・・。
・・・止めようとして下さっていたのですね・・・本当にありがとうございます。」
「いや、儂としては、あの最高の戦いの邪魔をされたくなかっただけだ。
儂が勝手に戦っただけだ、礼を言われる筋合いは無いぞ。」
シリウスは、そう言って笑った。
「・・・今までに無い最高の戦いを見せてくれて、ありがとうよ!!
いやあ、あの時仕事中だったので会社で観戦していて、
本当なら俺も直に見に行きたいと思ってたんだが・・・そういう意味では社長に感謝しないとな!」
藤木が、そう言って大笑いする。
「ははは・・・あなたの仕事への信念、見せて頂きましたよ。
あなたの実力なら、今後のフルメタルコロッセオで王者も狙えるはずです。
・・・ラーゼルの横槍は、もう無いのですから。」
「現王者にそう言ってもらえると嬉しいなァ・・・。
・・・よし、俺も本気で上を狙ってみるか!!」
藤木がまた笑う。
「・・・ええ、それが良いです!」
ギルティアも、笑顔で頷いた。
「おめでとうございますー!
やはり、私のインスピレーションにピキーンと来たのは間違いではありませんでした!!」
リラが、ギルティアに飛びつく。
「わー!」
ギルティアが、そのまま地面に押し倒される。
「リ、リラさん・・・ま、またですか・・・!?」
「もう・・・あの戦いを見てしまったら何度おめでとうと言っても足りませんよぉ!!
ですから、リアクションでやってみました!!」
「・・・あー・・・。」
ギルティアが、押し倒された状態で苦笑する。
「・・・と、取り敢えず、どいて頂けますか?」
「あ、はい。」
リラが退いたので、ギルティアが起き上がる。
「言葉だけで十分ですよ。嬉しいのは、私も同じですから。」
ギルティアが、笑顔で言う。
「とうとう、優勝なさいましたな・・・。」
アルフレッドが頭を下げる。
「ええ、ようやく修理に入れますね、アルフレッドさん。」
「お任せください、施設の修理が完了し次第、修理に取り掛からせて頂きます。」
その応えに、ギルティアが満足そうに頷く。
「しかし・・・孫の嫁候補が見つかってしまいましたな・・・。」
アルフレッドが、目線でランの方を差す。
「は?」
ギルティアが、目線の先を確認する。
「あの機体、ソルジャーESの改造機?」
ミノリが、ランに尋ねている。
「ああ、あれは、ジャンク山から拾ってきて、
俺一人で修理して改造したものだよ。」
ランが、自信満々に頷く。
「あの時、いきなり空から降りてきた時は何事かと思ったけど・・・。
まさか、ランが助けに来るなんて・・・。」
「俺の夢は、最強のメカニックになる事だからな!
そりゃ、今はまだギル姉とかチャンピオンとかには及ばないけど、
けど、せっかく使えるようにしたんだ、
あの時助けにいけなかったら、わざわざ拾って改造した意味が無いよ。」
ランが、笑顔で言う。
「ラン・・・君って子は・・・。」
ミノリが、ランの頭を撫でる。
「・・・私も応援してるわ、頑張ってね!」
「ああ、頑張るから、これからも見ていてくれよな!」
そう言って、二人は笑っていた。
「成る程・・・。」
それを見て、ギルティアが笑顔で頷く。
「・・・少し、外に出てきます。」
ギルティアが、そう一言言い残し、外に出る。
すると、ルークが空中から降りてくる。
「・・・おめでとう、流石だな。
今日は、工場の方への妨害も凄まじくてな。
・・・こちらも最終決戦レベルだったぞ。」
ルークが、そう言って笑う。
「お疲れ様でした・・・。」
ギルティアが頭を下げる。
「・・・問題無い。」
ルークが頷く。
すると、ギルティアの背後から声がした。
「・・・ここにおったのか。」
シリウスだった。
「少し、アルフレッドから事情は聞かせて貰った・・・。
・・・あの機体の修理の為にフルメタルコロッセオに参加したと。」
「・・・ええ。」
ギルティアが頷く。
「真相を直接尋ねれば、自分の耳を疑うような事実が聞けると聞いたが・・・。
・・・教えてくれ、今のお主の機体でも、ラーゼル相手にあそこまでの戦いが出来た・・・。
ならば、お主は今まで、その本来の機体で、一体、何と戦ってきたのだ・・・!?」
「・・・良いでしょう、シリウス、あなたは信頼できます。
・・・今から私が言う事は、恐らく俄かには信じられない事です。」
「お嬢ちゃんが、他者をたばかる事などしないのは、儂も良く理解しておる。
・・・大丈夫だ、信じよう。」
シリウスが頷くと、ギルティアは、話を続ける。
「・・・私は、そして、私の機体エルヴィント、
・・・いえ、エルヴズユンデは、この世界のものではありません。」
「何と・・・!?」
「私の本当の名は、ギルティア・・・ギルティア=ループリング・・・。」
ギルティアは、話を続けた。
・・・自らの素性と、今までの旅路を。
「・・・という訳で、今、エルヴズユンデの修理の為に、私はここにいるのです。」
「そうか・・・。」
シリウスが頷く。
しかし、シリウスのリアクションに、ギルティアは思わず苦笑してしまった。
「儂は・・・今年甲斐も無くどうしようもなくワクワクしておる!!」
シリウスの眼がキラキラ輝いている。
「あのー・・・ワクワクするような話でしたでしょうか・・・?」
「ずっと使命の為に戦ってきたお嬢ちゃんが相手だと、
このような反応が不謹慎なのは分かっておる。
だが、儂にとっては、この世界の外にもたくさんの世界や、宇宙がある、
ただそれだけでも、十分ワクワクするのだ。」
シリウスのその答えに、ギルティアは思わず笑顔になってしまった。
「・・・ふふ、成る程。」
「どんな世界があるのだろうか・・・。
そして、お主が戦ってきた異形とやら・・・是非、一度一戦交えてみたいぞ・・・!!」
シリウスのこの順応の早さに、ギルティアは思わず言葉を紡いだ。
「ははは・・・何でしょうか・・・シリウスは凄く楽しい人ですね・・・。」
「良い話を聞かせて貰ったわい・・・そっちの、ルークと言ったか?」
シリウスが、ルークの方を見る。
「お主・・・お嬢ちゃんと一緒に旅が出来るなど、羨ましい事この上ないぞ!!」
そう言って、シリウスは笑いながら、再び中の方へと歩いていった・・・。
「・・・ルーク、そろそろ私も中に戻ります。」
「ああ、繰り返すが、おめでとう!」
ルークは、そう言って飛び立っていった・・・。
「さて・・・私も戻りましょう。」
ギルティアも、中へと戻って行った・・・。

続く

地平の旅人Act.29 波乱の王者決定戦

   Act.29 波乱の王者決定戦

そして、王者決定戦当日・・・。
「・・・ファラオ店長からの連絡はどうなっていますか?」
出発前に、ギルティアが、アルフレッドに尋ねる。
「ええ、まだ大丈夫との事・・・しかし、だんだんと増えているようです。」
「思った以上に早いようですね・・・ならば、私がチャンピオンの座に就く事が出来次第、
ルークはあちらの増援に送った方が良さそうですね。」
ギルティアは、静かに呟く。
王者決定戦の事も気にかかってはいるが、
ギルティアにとっては、使命が最優先事項だ。
異形の動向が把握できれば、後は心配する事は無い。
ただ、全力で戦う、それだけで良い。
「・・・いよいよ、です。」
ギルティアが呟く。
「我々も、後から応援に行きます。ご武運を・・・!!」
「私は、私の持てる全力で戦うだけです。
・・・私が今までそうして来たように、ね。」
ギルティアは、そう言ってエルヴズユンデの方へと歩き出した・・・。

一方、アンファース・インダストリアルでは、シリウスが、応援に行く準備をしていた。
「・・・おう、アンファースの整備だが、いつもより念入りに頼む。
何か嫌な予感がする。お嬢ちゃんが負けるってのとは違う、嫌な予感が、な・・・。
・・・ラーゼルが、このまま黙っているとも思えないしな。」
シリウスは、部下にそう指示を出すと、自ら自転車をこいで、闘技場へと向かっていった・・・。

更に同じ時刻、ラーゼル重工、地下室には、巨大な機械が起動する音が響いていた。
「時は来た・・・処刑の、始まりだ・・・!!」
巨大な機械の動力が唸りを上げる。それはまるで、獣の咆哮のようだった・・・。

闘技場は、かつて無いほどの熱気に包まれていた。
「遂にこの日がやってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エルヴズユンデと、継ぎ接ぎだらけのフレアドイリーガルが、対峙している。
「・・・待っていた。」
「・・・お待たせしました。」
ギルティアとレディオスが、同時に言葉を紡ぐ。
そして、お互いがその言葉を聞いて、笑う。
「俺はただ、強い奴と戦いたいだけだ・・・もっと強くなる為にな・・・。
お前が誰でも構わない・・・俺を楽しませて欲しい。」
「私が目指すのはその先にある物です・・・申し訳ありませんが、勝たせて頂きます。」
「その先、か・・・フッ、面白い事を言う・・・。」
レディオスが、そう言うと、ギルティアは笑って頷いた。
そのやり取りを遮るように、実況の男の台詞が続く。
「無敗で今まで勝ち上がってきた、
美しく、そして圧倒的な戦闘能力を持つ乙女!
斬光の聖女ルギルナ=燐紅=御果!!
愛機エルヴィントも、場違いなほどの優美さの内に眠る、
恐ろしい程の力を見せ付けてきた!!
今回の戦いでも、その美しい剣閃が見られるか!!」
歓声が、一際強くなる。

一方、ラーゼル重工の本社のビルを破壊して、『それ』は動き出した。
「さぁ・・・忌まわしき者達が集まっている、鋼鉄の闘技場に行こうぞ・・・!!」
目的地は、フルメタルコロッセオだ。
周囲の建物を踏み潰しながら、歩き出す。
「な、何て事をやってやがる、社長!!」
崩れたラーゼル重工本社の瓦礫を突き破り、ジェネラルZXが姿を現す。
「藤木か・・・。」
「あんた、まさかフルメタルコロッセオにそいつで乗り込む気か!?」
藤木が叫ぶ。
「そうだ・・・忌まわしき輩は、あの場所で、大観衆の見守る中、公開処刑してくれる!!
そう・・・この私に刃向かう愚か者への、見せしめとしてな!!」
「そうかい・・・今までの荒事は会社を大きくする為の『仕事』として割り切ってきたが・・・」
ジェネラルZXが、大剣と榴弾砲を構える。
「あんたが『侵略』と『戦争』をする気なら、俺は社長の下では働きたくねェ!!」
「・・・阻むか、藤木よ・・・その機体で・・・!」
「ああ、そうさせて貰う!俺はあくまで『ラーゼル重工』の社員であって、
ラーゼル社長!あんた自身の目的の為の駒じゃねェ!!」
爆発音が、響き渡った・・・。

歓声に乗って、実況の男は言葉を続ける。
「一方!対するは長い間王者として君臨してきた無敵の王者、
強者との戦いのみを、ただひたすらに待ち望む戦士!
焔光の覇者レディオス=アイルレード!!
機体はかつてと変わらぬフレアドイリーガル!
その継ぎ接ぎの奥に隠れた真の力は、
まさに王者と呼ぶに相応しい戦闘能力を持っている!!
圧倒的な技量に裏打ちされたその強さが、今回も王者の座を護るのか!!」
「・・・全力で、行きます。」
「ああ・・・そうでなくては面白くない。」
「さぁ、王者決定戦、皆さんご一緒に!!」
見に来ていた大勢の観客も、一斉に叫んだ。
「GO!AHED!!」
その言葉と同時に、エルヴズユンデがフレアドイリーガルに斬りかかる。
「先手は貰いますよ!」
「ああ、構わん!」
エルヴズユンデが振り下ろした剣を、フレアドイリーガルは容易に回避した。
しかし、エルヴズユンデはそのまま左腕のクローをフレアドイリーガルに叩き込んだ。
フレアドイリーガルの胸部の継ぎ接ぎのアーマーが砕け散る。
「・・・っ!やるな!」
「私は、負ける訳には行かないのです・・・!」
そして、二機が離れる。
フレアドイリーガルが、腰に差した細身の剣を抜く。
「まずは、最大の枷である胸部のアーマーを破壊してくれた事に感謝しよう・・・!
・・・次はこちらから行くぞ・・・!」
フレアドイリーガルの背中のブースターが咆哮を上げる。
「・・・速い!?しかし!!」
エルヴズユンデがその攻撃に合わせる。

「凄い・・・何て速い戦い・・・。」
観客席で、リラが呟く。
「軽量、ブースター特化の機動戦闘型だからな・・・フレアドイリーガルは。
エルヴィントは重量級だが、それ以上に強力なブースターで動いておる。
・・・機動性はほぼ互角、といえるだろうな。」
シリウスが、それに説明を加える。
「・・・凄ぇ・・・俺達が、俺達がいじった機体が、あんな戦いをしているんだよ・・・!」
ランが、目を輝かせている。
「ああ・・・今回、お前は良く頑張ったぞ、ラン。」
アルフレッドが、ランを見て目を細める。
「・・・ありがとう、アル爺!」
「ふふ、成る程、跡継ぎ候補、という訳か・・・。」
シリウスが、それを温かく見守っていると、携帯通信機が着信を知らせる。
アンファース本社からだ。
「・・・何だ、今良い所であるぞ・・・何と!それは本当か・・・!?」
通信を聞いて、シリウスの顔色が変わる。
「・・・分かった、すぐ戻る。アンファースの出撃準備をしておけ・・・!
ラーゼルめ・・・この戦いの邪魔だけはさせぬぞ!」
シリウスが、席を立つ。
「シリウス社長?」
「・・・少々野暮用が出来た・・・少しばかり、本社に戻る。」
そう言って、シリウスは駆け出した。
凄まじい勢いで、シリウスのこいだ自転車がアンファース本社に突っ込む。
「アンファース、出撃準備完了しております!」
部下の言葉にシリウスが、うむ、の一言で応え、乗り込む。
「・・・ラーゼルめ・・・あのような化け物を・・・!!」
アンファースが、起動する。
「フルメタルコロッセオ史上、最高の王者決定戦だ・・・邪魔をさせる訳には、行かぬ!!」
凄まじいスピードで、遠く響く爆発音の場所へと、飛び立った・・・。

その後、エルヴズユンデも、フレアドイリーガルも、
相手に一太刀当てる事が出来ずに、何度も衝突を繰り返している。
「くうっ・・・流石チャンピオン・・・そう簡単に勝たせては貰えませんか・・・!」
「成る程・・・ヴルレオの雑魚とは違うな・・・!」
二機が、再び剣を構え、真正面から斬り込む。
「パワーならば・・・こちらが上です!!」
エルヴズユンデが、フレアドイリーガルを押し飛ばす。
「だが、その姿勢で、回避できるか!!」
フレアドイリーガルは、空中でそのまま姿勢を整えると、
再びエルヴズユンデに向け、剣を叩き込む。
「くっ・・・!!」
エルヴズユンデが、左腕の爪で、剣を受け止める。
「ほう・・・やはり、咄嗟の反応が上手いな・・・。
・・・面白い・・・これだ・・・俺は、この戦いを待っていたんだ!!」
レディオスが、そう言って笑う。
「ようやく、ようやくだ!楽しいぞ、楽しいぞルギルナ=燐紅=御果!!」
フレアドイリーガルの足から一丁のアサルトライフルがせり出し、それを左手に構える。
「ようやくだ・・・ようやく、俺が全力で戦える相手と出会う事が出来た!!
さぁ、この時間を、存分に楽しもうじゃないか・・・!!」
そして、アサルトライフルが、エルヴズユンデに向けて放たれる。
「くっ!」
再びエルヴズユンデがフレアドイリーガルを押し飛ばす。
銃弾は、フレアドイリーガルがバランスを崩したため、見当違いの方向へと飛んでいった。
「どうやら、喜んで頂けているようで、何よりです・・・!」
更に、エルヴズユンデが、押し飛ばされ、空中で姿勢を整えているフレアドイリーガルに追撃をかける。
「私としても、素晴らしい戦いが出来ている事・・・嬉しく思います・・・!!」
左腕のクローを、フレアドイリーガル目掛けて叩き込む。
フレアドイリーガルが、それを回避するが、回避しきれずに左肩のアーマーが抉り取られる。
「ええい!!」
フレアドイリーガルが、右肩のアーマーを剣で切り落とす。
いずれも、後からつけられたパーツだ。
フレアドイリーガルの本来の力が、更に大きく開放された、それだけだ。
「良いぞ!そうだ、そう来なくては・・・!!」
「しかし、私は負けるわけには行かない・・・全力で、打ち破るだけです・・・!!」
二人の叫びと、金属が激突する音が、闘技場を埋め尽くしていた・・・。

『それ』は、ジェネラルをものともせずに、フルメタルコロッセオへと進み続けていた。
『それ』が歩いた後には、ただ、瓦礫だけが残っていた・・・。
「くっ・・・流石に、化け物だ・・・!
まさか、俺たち社員に一切気付かれずにこんな物を作っていたとはな・・・。」
藤木が、静かに続ける。
「・・・だが・・・」
ジェネラルが、再び榴弾砲を構える。
「・・・ここで、この程度で負けられるかよ!!」
『それ』に、榴弾砲が直撃し、凄まじい爆発が起こる。
「効かぬわ!所詮、指揮官用の高級量産機程度・・・虫けら同然!!
そうだ・・・フルメタルコロッセオの剣闘士など、我が前には全て虫けらぞ!!」
ラーゼルの高笑い。
しかし、それは、次の瞬間、高高度から凄まじい勢いで叩き込まれた剣閃が、
装甲に激突する甲高い金属音に掻き消された。
「ラーゼル!お主の好きにはさせぬぞ!!」
「な、あの機体・・・アンファース・インダストリアルの!?」
藤木が、その機体を見て、驚愕する。
「シリウス=アンファース・・・ク、クク・・・虫けらがほざきおる・・・。
そのポンコツもろとも、鉄屑へとかえてくれる!!」
「やれるものならば・・・やってみよ!!」
アンファースが、ショットガンと剣を構える。
「そこのラーゼル重工の機体!」
「俺か・・・!?」
藤木が応答する。
「お主も、ラーゼルを止めようとしてくれておるのだろう!?」
「ああ、そうだ・・・奴が今やろうとしているのは、
今までのような企業活動じゃねえ・・・侵略だ・・・!!」
「・・・儂も手を貸す!共に戦おうぞ!!」
「・・・ああ!」
ジェネラルと、アンファースが、二機同時に攻撃を仕掛けた・・・。

二機の戦いは、双方が全く譲らぬまま、
何度も剣を交え続ける、全く互角の戦いになっていた。
「良いぞ・・・俺は、この瞬間が、永劫に続く事を望む!!」
「申し訳ありませんが・・・それを叶える訳には行きません・・・!!」
エルヴズユンデが、胸部のブラスターを放つ。
「だが、俺に勝てるか・・・!!」
フレアドイリーガルがそれを回避し、アサルトライフルを放つ。
「勝ちます・・・勝たねばなりません!!」
アサルトライフルの銃弾を剣で叩き落し、同時に左腕のレーザー、ビーム砲を放つ。
「くうっ・・・!!」
フレアドイリーガルは回避するが、全弾回避し切る事は出来ずに直撃弾を貰う。
「今です!!」
エルヴズユンデが、その一瞬を突いて一気に踏み込む。
「まだ、終わりでは無いぞ!」
フレアドイリーガルが、剣を強引に振りかざし、ブースターでエルヴズユンデに激突する。
「っ・・・!?」
「貰ったぞ!!」
そして、フレアドイリーガルが剣を振り下ろす。
剣が、エルヴズユンデの肩アーマーに深々と食い込む。
「果たして、そうでしょうか・・・!!」
エルヴズユンデの左腕のクローが、フレアドイリーガルに叩き込まれる。
「がっ・・・!!」
そして、零距離でレーザーとビーム砲を叩き込む。
フレアドイリーガルが吹き飛ぶ。
「良い攻撃だ・・・!」
レディオスが、そう言って笑う。
「・・・だが、まだ、俺は負けていない・・・!!」
エルヴズユンデが、肩アーマーに食い込んだ剣を引き抜き、地面に突き刺す。
フレアドイリーガルが、腰に差したダガーを抜く。
二機が、再び一歩を踏み出そうとした。

しかし、次の瞬間、フルメタルコロッセオを衝撃が襲った。
「・・・何だ・・・!?」
観客席の人々が、逃げ惑っている。
見ると、観客席の一方の箇所が崩れ、
そこには、かなりの損傷を負ったアンファースが倒れていた。
「・・・シリウス!?」
ギルティアが思わず叫ぶ。
「・・・すまぬ、ここまで、止められなんだ・・・!」
アンファースが対峙していた相手は、巨大な機動兵器だった。
全長百五十メートルはあるだろうか・・・?
「ルギルナ君、そして、レディオス・・・
貴様等は我が目的にとって最大の障害・・・
我にたてつく愚か者達よ、皆纏めてここで公開処刑してくれる!!
そう、この殲滅型重機動兵器、グレートラーゼルでな・・・!!」
中からの声で、ギルティアは理解した。
「・・・ラーゼル・・・!!」
「相変わらず、人の楽しみを邪魔するのが好きな奴だ・・・。」
レディオスが呟く。
「さぁ、死ぬが良い!!」
グレートラーゼルの両腕の巨大砲が火を噴く。
「立ち塞がるもの・・・私の使命の敵は、全力で排除します!!」
エルヴズユンデが、フレアドイリーガルの前に立ち、
プリズナーブラスターでグレートラーゼルの巨大砲を相殺する。

一方、大混乱していた観客席では、アルフレッドが観客の避難を誘導していた。
「ラン!何処に行くんだ!!」
ランが、全く別の方向に駆け出している。
「職員用のだが、こっちにも出入り口がある!!
ミノリ、緊急事態だ、そっちも使う!誘導を頼めるな!?」
「ええ、分かってます!」
ミノリが頷く。
「・・・俺は一旦帰って、少し持ってくるものがある!
アレが使えれば、避難も楽になるはずだ!!」
ランが職員用の出入り口からフルメタルコロッセオを出て、アルフレッド工業まで走る。

一方、エルヴズユンデは巨大砲を相殺し続けていた。
「中々持ちこたえるな・・・!」
「私の機体を・・・侮って貰っては困ります・・・!!」
エルヴズユンデが、ブラスターの出力を一気に引き上げる。
巨大砲を一気に押し返し、グレートラーゼルにブラスターが直撃する。
「ぬゥ・・・。」
「せっかくの楽しい一時を邪魔した罪は重いぞ!!」
「その通りぞ!儂とて、王者決定戦を楽しみにしておったのだからな!!」
更に、フレアドイリーガルとアンファースが、
それぞれ、アサルトライフルとショットガンを叩き込む。
「ぐ、ぐぐ・・・!!」
更に、グレートラーゼルの背後に、爆発が起こる。
「俺を忘れるんじゃねえ!
・・・テメェの会社の不始末だ、社員で蹴りをつけないでどうする!!」
そこでは、ジェネラルが、榴弾砲を構えていた。
「ふ、藤木さん!?」
「おう、ウチの社長がとんだ迷惑をかけちまってるな・・・すまねぇ。
これは既に『妨害』や『営業活動』ですらねェ・・・ただの、『侵略』だ・・・!!
・・・何としても、止めなけりゃならねえ!!ルギルナさん、力を貸してくれや!!」
「ええ、分かっています・・・!」
ギルティアが、ニヤリと笑った。

一方、アルフレッド工業に、ランは戻っていた。
「か、身体を鍛えていて助かった・・・。」
ランが、工場に走る。
「オメガアームド接続正常、起動準備完了!!」
そう、エルヴズユンデが置かれていた場所の横で横たわっていた巨体。
ランは既に、『こちら』の改造も終わらせていたのだ。
その胸部に、ランが乗り込む。
「・・・行こう、オメガソルジャーGX!!」
オメガソルジャーと呼ばれたそれは、立ち上がる。
見ると、両腕が腕と一体化した剣に換装され、背中にもブースターが追加されている。
「作戦目的、フルメタルコロッセオの観客の避難の支援、及び、ギル姉の支援!!」
そして、オメガソルジャーは飛び立った。
初めての操作だったが、ランには、上手く操縦する自信があった。
その根拠は、ソルジャーESに搭載されていたAIの存在だ。
ソルジャーに搭載されていたAIを、今も操縦の補助にそのまま搭載している。
ランの操作の意図を読み取り、AIが的確に機体を動かす、
それが、今のオメガソルジャーだった。

戦闘は、ますます激化していた。
「これでも食らうが良い!!」
グレートラーゼルの両肩が開き、夥しい量のミサイルが姿を現す。
「な、何だと!?」
「回避行動を取れば、観客への被害が拡大します・・・!!」
「クク・・・避けられまい!!」
そのミサイルが、一斉に放たれる。
「避けられないというのならば・・・迎撃するまでです!!」
エルヴズユンデが、全火力でそれを迎撃する。
アンファースも、フレアドイリーガルも同じように、ミサイルを撃墜する。
ジェネラルは、遠くからそれを援護している。
「・・・ッ!?」
一発のミサイルが、エルヴズユンデの横を抜け、
今だ避難の途中の観客席へと向かう。
「しまった・・・!!」
エルヴズユンデがそちらの方を向こうとする。
背後を見せるという事は、残りのミサイルの雨の直撃を貰う事を意味する。
しかし、ギルティアは、今までも自分の損害より人々の方を優先してきた。
その通りにギルティアは行動しようとした。
・・・しかし、今回は、そうする必要は無かった。
「ここは、俺がやるッ!!」
その声と同時に、空中からのビームが、ミサイルを撃墜し、
観客席の前にそれを撃った機体が降りる。
「ソルジャー・・・ラン、ですか・・・!?」
「ああ、俺だよ!避難の支援は俺が引き受ける!
・・・ラーゼルにも一発ぶち込みたいしな!!」
「ありがとう、本当に見事です。」
ギルティアが、静かに笑う。
「・・・勝負は、これからです!!」
エルヴズユンデが、グレートラーゼルに向けて突進する。
「なっ・・・幾らお嬢ちゃんでも、あの火力相手に、突撃は無茶だ!!」
「・・・これが、私の戦いです・・・!!」
グレートラーゼルの各所からの凄まじい砲撃を全て剣と爪で叩き落しながら、
エルヴズユンデが正面から前進する。
「す、凄ェ・・・!」
藤木が、唖然とする。
「たあああああああああああっ!!!」
剣の一撃が、グレートラーゼルの左腕の巨大砲を真っ二つにする。
「な、何だと!?」
「ラーゼル・・・あなたのような悪党を倒すのは、私の使命です!」
その言葉に応えるように、ランから通信が入る。
「観客の避難はほぼ完了したよ!これから、俺もそっちの援護に入る!!」
「まだ、機体の扱いには慣れていないはずです・・・くれぐれも、無理はしないで下さい。」
「分かってる!」
そう言って、オメガソルジャーが、エネルギーを纏った両腕の剣を振るう。
すると、剣から光の刃が放たれ、グレートラーゼルに直撃した。
「・・・どうだ!!」
グレートラーゼルはよろめいたが、損傷はごく小さい。
「その程度・・・!!」
ラーゼルの嘲笑が響く。
「威力は大した事は無くても、それで隙が出来る!今だ、皆!!」
ランの叫びに、その場にいる全員が、今の瞬間が好機と悟る。
「でかした!流石はアルフレッドの跡継ぎだけの事はある!!
儂と、我が相棒アンファースを、散々茶番に利用した事、後悔するが良い!!」
アンファースが、ブースターを全開にして突っ込む。
ショットガンを乱射し、装甲に歪みを造る。
「でええええええあああああああああああっ!!!」
そして、一閃が、右腕の巨大砲を真っ二つにする。
「な、この老いぼれ風情が・・・!!」
「おっと、余所見をしている暇は無いぜ!!」
再びグレートラーゼルの背後に爆発が起こる。
「でええええええええええええいっ!!」
ジェネラルが、弾が尽きるまで榴弾砲を撃つ。
「ぬおおおおおおおおおっ!!!」
そして、その爆発が集中した場所、グレートラーゼルの腹部を、剣を構えた体当たりで突き破る。
「お、おのれ、この、裏切り者が!!」
「言った筈だぜ!俺はあんたの駒じゃねえ・・・ただの、一つの会社の一社員だってな!!
たとえ柄が悪かろうが良かろうが・・・それが、会社の為ならば仕事だと引き受けてきた・・・。
だが、今のあんたに与する事が、会社の為になるとは思えねえ!!」
それに対して、グレートラーゼルが、
破壊された巨大砲を排除し、拳を振りかざす。
「俺の邪魔をした貴様が、俺の前で好き勝手に行動出来ると思ったら、大間違いだ・・・!!」
フレアドイリーガルが、先程エルヴズユンデが地面に突き刺していた剣を引き抜く。
「いつも俺の邪魔ばかりしたお前には、俺とて恨みを晴らさねばならない・・・!!」
フレアドイリーガルがグレートラーゼルに突進し、拳の継ぎ目に、剣を叩き込む。
更に、その隙間から、内部に剣を食い込ませ、抉る。
そのまま、グレートラーゼルの拳を真っ二つに切り裂く。
更に、もう一本の腕の拳に向けて突撃し、アサルトライフルを関節の継ぎ目に撃ち込む。
そして、そのまま、剣を用い、凄まじい手際でその関節部分を解体した。
腕が外れ、地面に落ちる。
「・・・さて、最後は私の番、ですね・・・!」
エルヴズユンデが、自らの剣に最大出力でブラスターをぶつける。
剣が、凄まじい熱を帯びて赤熱化する。
「・・・ラーゼル!覚悟なさい・・・!!」
「何故だ!何故、我がこんな所で、こんな虫けらに!!」
ラーゼルの絶叫が響き渡る。
「それは、私が今、ここにいるからです・・・!!」
エルヴズユンデが、赤熱化した剣を振りかざす。
「私は私の使命を、全力で果たします・・・!!
いかなる者がその前に立ち塞がろうとも、私は、躊躇ったりはしません!!!!」
振り下ろした一撃が、グレートラーゼルを、縦に一刀両断にした。
「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
グレートラーゼルは、大爆発して消えた。
「・・・願わくば、汝の罪が祓われん事を。」
エルヴズユンデが剣を降ろし、ギルティアは、静かに呟いた・・・。

「終わり、ましたか・・・。」
ギルティアが呟く。
「勝手に、終わるな。」
レディオスの言葉が、それに続く。
見ると、フレアドイリーガルが、また剣を構えている。
「・・・成る程、邪魔者がいなくなったところで、続き、という訳ですか・・・。
・・・良いでしょう、お互い、これだけ消耗しても、戦意を失わないというのなら・・・。」
ギルティアが、ニヤリと笑った。
「・・・私も、最後まで付き合います・・・!!」
エルヴズユンデも、剣を構えてそれに応じる。

「・・・!まさか、まだ戦う気なのか!?」
シリウスが尋ねる。
「ええ・・・レディオスも、そのつもりのようですから。」
ギルティアが応える。
「・・・フ、フフ・・・予想外だが・・・
どうやら、最高の戦いを見損ねずに済みそうだな・・・!!」
アンファースが観客席に向かい、そして、シリウスがそこから降りて観客席に座る。
「・・・儂もその戦い、見届けさせてもらおう。」
「おお!?これだけやって、まだ続きをするのか!?
・・・物好きな連中だぜ・・・ま、良いさ・・・。
最高に良い勝負が見られそうだしな、俺も観客になるぜ・・・!」
藤木も観客席に座る。
「俺は、当然最後まで見届けるよ。
俺が始めてまともに改造に携わった機体なんだ・・・その結果は、見届けたい!!」
ランが、オメガソルジャーの胸部から出てきて、その上に座る。
一方、観客席に、少しだけ人が戻ってきていた。
その中には、ミノリ、アルフレッドや、リラもいた。

一方、実況の男が、最初にアンファースが倒れた瓦礫の中から這い出してくる。
「あんな事があって・・・尚、試合を、続行するのか・・・。
・・・素晴らしい闘志だ・・・僕も燃え上がってきたぞ!!」
瓦礫の上に立つ。
「観客は少ないが、これからが、本当の王者決定戦だ!!
しっかりとその眼に焼き付けろ!これが、本当の剣闘士の姿だ!!
さぁ、今こそ決着の時!存分に、戦うが良い!僕はそれを見届けよう!
そう、最高の王者決定戦の、始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
実況の男の叫び。
「・・・行きますよ、レディオス。」
「ああ・・・。」
そして、二人が同時に叫んだ。

「「GO!AHED!!」」

続く

地平の旅人Act.28 動き出す欲望

   Act.28 動き出す欲望

二日が経過した。
王者であるフレアドイリーガル・・・
・・・レディオス=アイルレードへの挑戦権を賭けた戦いの日だ。
ギルティアは、改装が済んだエルヴズユンデを見上げていた。
左腕のクローが巨大化している。
成る程、シールドと一体化させてクローも巨大化させたのだろう。
ビーム砲は、シールド側に内蔵されている。
クロー部分のレーザーと併せて、火力は確実に増強されている。
また、普段、四枚の翼が生えている場所に、機械の翼が装備されている。
「成る程、流石はアルフレッドさんです・・・。
説明していなかった、翼の装備箇所まで把握しておられたとは・・・。」
ギルティアが感心する。流石は、ファラオ店長が紹介するだけの事はある。
「今回は俺も結構改造には口を出したんだよ!」
いつの間にか、ギルティアの横にランが立っていた。
「素晴らしいです。これならば、この世界のどんな機体が相手でも、対等以上に戦えます。」
「シールドをクローと一体化させるってのは、俺のアイディアなんだよ!」
「おお、そうでしたか・・・どうやら、どんどん腕を上げておられるようですね・・・この調子ですよ。」
ギルティアが微笑む。
「・・・ああ!」
ランが、大きく頷く。
「今日は、アルフレッドさんも来るのでしょう?」
「ああ、けど、今は少し疲れて寝てるよ。」
「でしょうね・・・無理はさせないで下さいね?」
ギルティアが、苦笑しながら言う。
「分かってるよ。」
「それなら良いのです・・・では、会場で会いましょう!」
ギルティアが、その背に翼を生やして飛び、エルヴズユンデの胸部に乗り込む。
思えば、ランの前でこの姿を見せたのは、初めてかもしれない。
リラの作ったバトルスーツはどうやら、
元々ギルティアが着用していた方の服の構造を参考にして造ったらしい。
それが、図らずとも翼への干渉を起こさないデザインへと繋がったようだ。
「か、かっこいい・・・そうか、あれがギル姉の本当の姿・・・。」
ランが見惚れて、思わず呟いた・・・。

エルヴズユンデが、空へと舞い上がる。
「素晴らしい・・・今までの操作感覚とは違いますね。
・・・機動性、追従性、共に向上しています。」
ギルティアが、エルヴズユンデに乗り込み、空中から、フルメタルコロッセオへと向かった・・・。

フルメタルコロッセオに、今、四機の機動兵器が立っている。
一機はエルヴズユンデ、残りの三体は、全て、敵だった。
「いよいよ、現チャンピオン『焔光の覇者』レディオス=アイルレードへの、
挑戦権が賭かった戦いが、幕を開ける!!」
凄まじい歓声が、フルメタルコロッセオを満たしている。
「何と、今まで無敗!
参戦してから、まさに天下無双の勢いで勝ち進んできた、アルフレッド工業!!
機動兵器エルヴィントが、大幅な強化を施されて、今、降臨する!!
それを操るは、その姿、立ち振る舞い、戦いぶり、
その全てが、まさに僕が呼んだ二つ名の通りの女性!!
『斬光の聖女』ルギルナ=燐紅=御果!!
今回の戦いに勝利すれば、いよいよ、焔光と斬光の頂上決戦が実現する事になる!!」
対する相手は、ジェネラル・オブ・アーミーズ、ガンサイド、
そして、先回アンファースとの戦いに投入されていたソードサイドだ。
「しかし、ラーゼルも負けじと、最新型を投入だ!!
ジェネラル・オブ・アーミーズPE!実験に実験を重ねた、完成型だ!!
パイロットは、ヴルレオ=グライアード!!」
「・・・今度は、勝たせて貰う・・・!」
コクピットで、ヴルレオが呟く。
「そして、ガンサイドPE、パイロットはアーヴェイル=ラルベイン!!
ソードサイドPE、パイロットはハルヴェール=ラルベイン!!
何と、この二機のパイロットは双子だ!!
本来ならば、四体の総当りの筈だが・・・何かが狂いだしているのは間違いない、
しかし、この戦いは、きっと素晴らしい戦いになる筈だ!!」
実況の男が叫ぶ。
「・・・ここまでは予想通り・・・後は、全力で戦うだけです。」
ギルティアは、コクピットで、静かに呟いた・・・。
「さぁ、いよいよ注目の一戦だ!!GO!AHED!!」
実況の男の言葉と同時に、エルヴズユンデはジェネラル・オブ・アーミーズに突進した。
「な!?」
「たああああああああっ!!!」
左腕の爪が、ジェネラル・オブ・アーミーズの右肩アーマーを薙ぎ払う。
全く、反応できていなかった。
「・・・な、何だ、今のは・・・!!
・・・くっ・・・ソードサイド!ガンサイド!!合体だ!!」
ソードサイドと、ガンサイドが、分離、変形する。
背中に、ウィングと合体した巨大砲が装備される。
また、二連装プラズマキャノンが両腕に装備され、
更に、ソードサイドが変形した大きな剣が、ジェネラル・オブ・アーミーズの右腕に合体する。
「ジェネラル・オブ・アーミーズ・・・パーフェクトシフト!!」
「それが完全体ですか・・・。」
ギルティアが、ニヤリと笑う。
「・・・力負けはしません・・・!」
エルヴズユンデが、剣を構える。
二機が、正面からぶつかる。
「ちっ・・・相変わらず、何て馬鹿力だ!!
こちらはジェネレーターが三つだぞ!?」
「ジェネレーターならば、こちらも増設済みです・・・!!」
「な!」
エルヴズユンデが、強引に押し飛ばす。
更に、左腕のクローからレーザーが、
そしてそれと一体化したシールドから、二筋のビームが追撃で叩き込まれる。
「ぐうっ!認めない!ラーゼルの最新型が・・・最新型が!
・・・あんなガラクタ小屋から生まれた機体に力負けするなど!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズが、両腕のプラズマキャノンと、肩の巨大砲を同時射撃する。
「生まれた、は適切ではありませんが・・・
少なくとも、あの場所をガラクタ小屋呼ばわりは・・・許しませんよ!!」
エルヴズユンデも、腕のレーザー、ビーム砲と、胸部のプリズナーブラスターを一斉射撃して、それに応じる。
ブラスターと巨大砲が、お互いを相殺し、
ノーガードの両者にプラズマキャノン、レーザー、ビーム砲の雨が襲い掛かる。
「威力なら、こちらのプラズマキャノンが上だ!この勝負、勝ったぞ!!」
「頑丈さには自信があります・・・持ち応えて見せましょう!!」
事実、エルヴズユンデは、撃ち合いをしながら前進を始める。
「力押しには・・・それ以上の力押しで、応えるまで!!」
ブースターが咆哮を上げ、相手の巨大砲をブラスターで押し戻しながら、エルヴズユンデが一気に突撃する。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
巨大砲を、エルヴズユンデが真っ二つにする。
「ぬ、なっ!?」
被弾したダメージは決して少なくは無いが、相手へのダメージは、それ以上だ。
「・・・ふふ、さぁ、続けて行きますよ!!」
エルヴズユンデが、再び剣を構えて突進する。
「さ、させるかァ!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズが、ソードサイドの剣でそれを受け止める。
「アーヴェイル!分離して背後から攻撃しろ!」
破壊された巨大砲と、両腕のプラズマキャノンが、
再び変形、合体して機動兵器形態になり、
エルヴズユンデの背後から、大口径機銃と、
普段はジェネラル・オブ・アーミーズが武器として使用する、
二連装プラズマキャノンを放つ。
エルヴズユンデが、咄嗟に離れてそれを回避する。
弾の雨が、ジェネラル・オブ・アーミーズを襲った。
「くっ・・・何をしている!!敵はあっちだ!」
ジェネラル・オブ・アーミーズの装備してる大剣が、光を放つ。
「・・・アンファースの時と同じように、ぶった斬ってやる!!」
「それはこちらの台詞です!
彼がしたように、真っ二つにして差し上げましょう!!」
ギルティアの叫びと共に、エルヴズユンデは再び突進する。
「今だ!撃て、アーヴェイル!!」
突進を開始したエルヴズユンデを狙い、
ガンサイドが、装備している使用可能な火器を一斉に放つ。
「その程度の火力では・・・」
エルヴズユンデが、クローと一体化したシールドで、それを防ぐ。
「・・・私を止める事は出来ません・・・!!」
「チッ・・・なら!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズが、ブースターを全開にする。
どうやら、真正面から迎え撃つ気のようだ。
「それで良い・・・来なさい!!」
「くたばれ、この場違い女が!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズが、剣を振り下ろす。
「場違い女で・・・」
エルヴズユンデが、斜めに振り下ろされた剣を、姿勢を低くして回避する。
「・・・悪かったですね!!」
そして、左腕のクロー・・・いや、左腕の拳を、
ジェネラル・オブ・アーミーズの腹部に捻じ込む。
「なっ・・・!?」
腹部に拳が入った瞬間に、レーザー、ビーム砲を何度も叩き込む。
そして、そのまま、ジェネラル・オブ・アーミーズは、見事に吹っ飛ばされた。
ジェネラル・オブ・アーミーズが壁に叩きつけられ、ウィングが破損する。
エルヴズユンデが、剣を構える。
「あ、アーヴェイル!合体だ、合体しろ!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズに、再びガンサイドが合体する。
巨大砲は使えないが、両腕のプラズマキャノンは撃てる。
エルヴズユンデが、再び、突進する。
「ヴルレオ・・・これで終わりです!!」
「く、来るな!来るなぁぁぁぁぁ!!」
プラズマキャノンの雨が、エルヴズユンデに襲い掛かる。
それを、剣で叩き落しながら、エルヴズユンデは更に突撃を続ける。
「こうなったら・・・!!」
ジェネラル・オブ・アーミーズが、剣を構えなおす。
「今度こそ、ぶった斬って・・・」
「・・・遅い!!」
しかし、剣を構えなおした時、
既にジェネラル・オブ・アーミーズは横に真っ二つになっていた。
「な、馬鹿な・・・!!」
「次!!」
分離したガンサイドとソードサイドを、
それぞれ、ブラスターとレーザー、ビームで攻撃する。
ブラスターの直撃を貰ったガンサイドが倒れる。
そして、レーザー、ビームで足を止められたソードサイドに、
エルヴズユンデのクローが叩き込まれた。
・・・勝負は、決まった。

「鮮やかな勝利だぁぁぁぁぁぁ!!!」

実況の男の叫びが、闘技場に響く。
「これで、チャンピオンへの挑戦権がルギルナ=燐紅=御果に与えられるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」
実況の男の叫びをよそに、ギルティアの視線は、観客席に向けられていた。
「・・・マイクを貸してください。」
「え?あ、ああ・・・。」
実況の男から、マイクを受け取り、ギルティアは言葉を続ける。
「・・・お待たせしました。」
ギルティアの視線の先には、レディオスの姿があった。
「・・・あなたとの対戦、楽しみにしていますよ。」
その言葉を聞くと、またレディオスは微かに笑い、満足そうに頷いた・・・。
ギルティアが、実況の男にマイクを返す。
「今の言葉は、レディオスが先日の戦いで言った言葉への返答のようだ!!
あの時彼が言っていた相手は、彼女、ルギルナ=燐紅=御果だったらしい!!
これは、ますます対戦が楽しみだぁぁぁぁぁぁ!!!
王者決定戦は、今から三日後だ!
焔光の覇者と斬光の聖女!
勝つのは、果たしてどちらなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
実況の男の叫びに応えるかのように、闘技場の歓声が一際強くなった・・・。

アルフレッド宅に帰還したギルティアを、アルフレッドとシリウスが出迎える。
「とうとう、ここまで来ましたな・・・ギルティアさん。」
「見事な戦いだったぞ!修理中だったが、儂の相棒アンファースも、どこと無く満足そうだった!!」
更に、その奥ではリラとミノリ、そしてランが待っていた。
「リラさん!?それに、ミノリさん!?」
「リラさんが、祝いに行くと行ったので、せっかくですから同行しました。」
ミノリが、苦笑しながら言う。
「ルギルナさん!いよいよ王者決定戦ですね!応援してます!!」
リラが、ギルティアに引っ付く。
「わ、わわっ・・・!」
「・・・おっと、つい興奮してしまいました、すみません。」
リラが、慌てて離れる。
「ふぅ・・・今回はいじられずに済んだよ。」
ランが、ため息をついている。
「良かったですね、ラン。」
「ああ・・・それはそうと、いよいよ王者決定戦だな!
俺達が出来る改造は全部やった、あとは、任せるよ・・・!」
「任せてください!」
ギルティアが頷く。
こうして、アルフレッド宅で深夜まで、ギルティアの祝勝会、そして応援会が開かれる事になった・・・。

ラーゼル重工の地下で、ラーゼルは呟く。
「そうだ・・・初めから、こうしていればよかったのだ・・・。
圧倒的な力には、ルールなど意味を成さない・・・。
・・・そうだ、気に入らぬものは、全て破壊してしまえ・・・。
この力があれば、フルメタルコロッセオなどというものに頼らずとも、
この世界は我が物よ・・・!!
手始めに、王者決定戦で、我が邪魔をした二人を。
公開処刑してやろう・・・そうだ、それが良い!・・・クク、クククク・・・フハハハハハハハハハァ!!」
彼の前には、巨大な物体が、金属の輝きを放ちながら佇んでいた・・・。

続く
プロフィール

白翼冥竜

Author:白翼冥竜
辺境ロボットサークルのリーダーにして、
勇者ロボットをこよなく愛する男。

「地平の旅人」第一期、完結。
気になる方は、ピクシブ、もしくはエブリスタで検索を。

ネタやキャラについて語りたくてしょうがないが、本編を書き進めなければ語れぬこのしんどさたるや。
地道に農作業をしつつ、現在「地平の旅人ZWEI」をピクシブにて連載中。

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